静岡市の文化財

歴史博物館建設中

2020.09.29清見寺の資料調査が行われました!

これまで、静岡市では歴史文化施設での展示のため、家康公の甲冑の復元模造や今川氏の木像の複製製作を進めてきました。

これらに続いて、今回は清見寺が所有している「慶長十二年通信使三使詩稿懸板(けいちょう12ねんつうしんしさんししこうかけいた)」(静岡県指定文化財)と「歴代序略版木(れきだいじょりゃくはんぎ)」(静岡市指定文化財)の複製品を作ります!

まず、簡単に資料を紹介します。

懸板と版木①.JPGのサムネイル画像【慶長十二年通信使三使詩稿懸板】

慶長12(1607)年、朝鮮との国交を回復しようと家康は朝鮮通信使(回答兼刷還使)を日本に招きます。「慶長十二年通信使詩稿懸板」とは、通信使が江戸へ向かう途中に逗留した清見寺で詠んだ3人の詩を掛け板にしたてたものです。

懸板と版木②.JPG【歴代序略版木】

「歴代序略」とは中国の歴史書で中国歴史の基礎を学ぶ書物です。太原崇孚(たいげんそうふ)(雪斎:せっさい)はこれを天文23(1554)年に刊行しており、その版木が清見寺に残されています。全部で8枚ありますが今回はその1枚を複製します。

※清見寺についてはこちらをご覧ください。

それでは、これらの資料調査の一部をご紹介します。

懸板と版木③.JPG【調査の様子】

今回は清見寺の仏殿をお借りして2日間にわたって行いました。調査内容は3D計測と色取り、そして写真撮影です。

懸板と版木④.JPG 懸板と版木⑤.JPG

【3D計測の様子】

3D計測は、資料に光を当てて出来た影を角度の違う3つのカメラで捉えます。3つのカメラが捉えた影の誤差から表面の凹凸を計測し、データを繋いだパソコンへ送りパソコン内で立体物を復元していきます。計測できる範囲は極わずかなため、少しずつ確認をしながら作業を進めます。

懸板と版木⑥.jpg 懸板と版木⑦.JPG

【色取りの様子】

複製には色の再現も重要で、資料がどんな色をしているか、木目やにじみなど細かい部分を目で見て確認します。この時、絵の具を使って資料の色を実際に再現しながら色を取り出していきます。

今回の資料は、なかなか間近で確認する機会がありません。この機会に普段では見られない裏側など細かい部分も調査しました。すると「慶長十二年通信使三使詩稿懸板」に大きく割れがあり、それを修理した跡を確認することが出来ました。いつ、誰が行った修理かは定かではありませんが、「直して残そう」と思った人いたことがいたことはわかります。

今回の資料に限らず、多くの資料には修理跡があります。これは資料を大切にしていた先人たちの証だと思います。

文化財を長く将来に残すためには、資料の今の状態をしっかりと把握することも必要です。今回の調査はその一端を担っていると思っています。

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