静岡市の文化財

第1回 駿府で愛されたお菓子 〜扇子屋と駿府・静岡〜

第1回 駿府で愛されたお菓子 〜扇子屋と駿府・静岡〜

第2章 扇子屋の菓子

「まんちう(饅頭)屋と申候得者、当店一番(饅頭屋といったら扇子屋が一番)」

江戸時代後半、徹底的な倹約が求められた「天保の改革」によって、饅頭の価格を下げることを求められた駿府の菓子商人たちとの価格調整交渉が無事落着した時、安堵した庄兵衛が言った一言です。

江戸時代の扇子屋と言えば、饅頭が看板商品でしたが、扇子屋では実に多くの菓子を扱っていました。菓子の形や材料を記した「菓子絵図」と呼ばれる帳面が扇子屋に残されています。江戸時代の駿府の人々は、どのような菓子を食べていたのでしょうか。

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[菓子銘帳]


売りに売れた饅頭

江戸時代から扇子屋の看板商品として知られた饅頭ですが、浅間神社の祭礼「廿日会祭」の際には、すさまじい売れ行きを見せました。

・安政7年(1860) 26万個

・万延2年(1861) 17万個

・文久2年(1862) 31万個

・元治2年(1865) 41万個

扇子屋には、饅頭切手の印刷に使われた版木が残されています。

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扇子屋の屋印

江戸時代から明治時代にかけて、扇子屋で使用された印です。菓子袋などに捺(お)されました。

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菓子の広告版木

扇子屋で明治時代に売られていた求肥不老羹というお菓子の広告版木です。内容を現代語訳すると以下のようになります。

「この求肥不老羹は、龍眼肉を精錬したもので、体調を整える秘薬です。オランダの名医が作って常に食べている菓子ですので、とても食べやすいものです。扇子屋では、縁あってその製法を伝授されました。薬としての菓子なので、御茶菓子としてのみではなく、食中毒や二日酔い、疲労や産後の不調を整える絶品です。また、旅行に携帯しても良いものです。様々な病を御持ちの方も長寿になるほど効き目があります。ご進物用、箱入りなどご用意しております。」

明治時代になると、保存のきくお菓子が増えてきたことがわかります。

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カステラの食べ方

・寒いときは熱いお湯をかけて

・暑いときは冷水にひたして

・酒の肴には大根おろしとワサビを

・煮物料理に入れて

さらには、二日酔いに効く?

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[カステラ版木]

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