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文化財ブログ

2014.06.24コウボウキビの植え替え作業

 南アルプスのユネスコエコパーク登録により、にわかに注目を集めるようになった葵区井川。

 大井川最上流部に位置し、豊かな山村文化を伝えている井川地区は、文化財課も重要視してきた地域で、これまでも古文書の調査や仏像調査、聞き取りを中心とした民俗調査などを行ってきました。

 そうした中で、ヒエやアワ、キビなどの雑穀を今でも10種類ほど栽培していることがわかり、地元の方々とその品種の保存にも取り組んでいます。

 雑穀のうちヒエやキビは、5月の初旬に苗床を作り、稲作の田植え作業のように6月の下旬に別の畑に植え替えます。

コウボウキビ移植作業1.jpg

コウボウキビの移植作業2.jpg

コウボウキビの移植作業3.jpg

 写真は、私たちが雑穀の栽培技術について教えてもらっているおじいさんが、コウボウキビの移植作業をしているところです。
コウボウキビは、一般的にはシコクビエと呼ばれているアフリカ原産の品種です。井川では、痩せた土地でもよく実る弘法大師(空海)から恵んでもらったありがたい穀物であるという言い伝えからコウボウキビと呼んでいます。

 収穫すると粉にして、カキコ(掻き粉)や焼餅などにして食べます。とくに餡子をつめた焼餅は独特の風味があっておやつにおすすめの伝統食です。

 おじいさんは、鍬でサクリ(苗を植える溝を掘ること)を切り、苗床から採ってきたコウボウキビの苗を2~3本ずつ、およそ17㎝程の間隔をあけて斜めに置いていきます。
苗を置いた溝には次に起こした土をかけておきます。実に丁寧な作業です。斜めにしたままで大丈夫かな?と思うのですが、苗が自然に体を起こしてすくすくと生長していきます。

 コウボウキビはイネと同じように分けつ(根に近い茎の関節から枝分れすること)して体を大きくするし、耕したばかりの畑に植えかえることで雑草との競争にも勝つことができるので、直播きよりも移植法の方が良いのだそうです。

雑穀の畑.jpg

 こちらは、焼畑倶楽部「結の仲間」の皆さんに協力してもらい雑穀を育てている畑です。
 井川に残る雑穀のうち、栽培する人がかなり少なくなってきてしまったシロモチ(モチアワ)、コウボウキビ、ホモロコシ、ケビエなどを育てています。

ケビエ.jpg

 ケビエも順調に育っているようです。
 ケビエは、かつて焼畑で栽培されていた品種で、実の先端から毛のように芒(のぎ)が伸びていることからケビエと呼んでいます。コウボウキビと同じく痩せた土地でもよく育つ品種なので、かつては盛んに作られていました。しかし、焼畑をやらなくなってしまった昭和30年代以降、栽培する家がどんどん減っていき、気づいてみると1軒だけが作り続けているといった状況になっていました。

 ところがその家も昨年ついにケビエの栽培をやめてしまったのです。
 落ち穂から育ったのでしょう。二年前にケビエを栽培していた畑で見つけた穂を一本もらってきて今年播いたのが、この畑のケビエです。

 順調に育って、無事種を継ぐことができればと願っています。

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